2014年11月13日木曜日

「ラタラジューの事例」セッション逐語録6

   SAM催眠学序説 その28



ここでの対話でも、対話者カルパナさんは、顕現化しているラタラジュー人格の年齢を特定しながら対話しようとする意識がないようです。
したがって、カルパナさんの質問が、いつの時点のことを尋ねているのかあいまいになりがちで、混乱がみられます。
同様に質問されているラタラジューにも、いったい何歳のときのことを問われているのか戸惑いと混乱がみられます。
いきおい、ラタラジューの回答は、「解りません」 が多くならざるをえないことになります。

注:略号KAはネパール人女性対話者カルパナさん、略号CLはクライアント里沙さん。


KA  Tapaile ke garnuhuncha sadai? Ke kam garnuhuncha?
   (あなたは毎日どんな仕事をしているんですか? どんな仕事をしているんですか?)
注:ラタラジューが何歳のときか、または住んでいる場所の特定がない質問なので、答えようがないと思われる。ナル村にいたときの仕事は農作業であったし、カトマンズに住んだ30歳のときには傭兵であった。

 CL  Ah ...
      (あー)

KA  Tapai ke kam garnuhuncha?
   (あなたはどんな仕事をしているのですか?)

CL  ah .. e ... ah ... ume ... eh ... umer pachis  nargou?.
   (あー、あー、年は25歳、ナル村?)


KA  Tapai kaha basnu hunchare ahile? Tapai kaha basnu huncha, tapaiko gaun ka ho?
    (今、あなたはどこに住んでいるのですか? あなたはどこに住んでいるのですか、あなたの     村はどこですか?)
注:「今どこに」の「今」が、ラタラジューが何歳のときかの特定がない質問なので、答えようがないと思われる。また、出身の村の名前がナル村であることはすでに話しているので、それ以外に住んでいた村を尋ねられていると思ったかもしれない。


CL  Oh ... ho. oh ...
   (おー、はい。おー)

KA  nam ke ho gaunko?
   (どこですか、村の名前は何ですか?)

CL  Ah ... bujina.
   (あー、分かりません)

KA  Bujinubhaena.
   (分かりませんか)

KA  Lekna jannuhuncha tapaile?
   (字は書けますか?)

CL  Oh ... ho.
      (おー、はい)

KA  Audaina? Lekna padna?
   (書けませんか? 読み書きは?)

CL  Ah ... hoina.
   (あー、できません)
注:ラタラジューが文盲であったことを、2005年の日本語セッションで答えている。カルパナさんはこの事実を知らない。


KA  audaina?
   (できませんか?)

KA  Tapaiko gaunma mukhiya ko cha ta?
   (あなたの村の長はだれですか?)

CL  Kira.
   (キラ)

KA  Gaunma ma?
   (村では?)

CL  Kira. Ah ... kira.
   (キラ。あー、キラ)

KA  Kira?
   (キラ?)

CL  Kira. ... e ...
   (キラ)
注:ラタラジューは、「キラ」という村長名を思い出すと同時に、激しい腹痛を訴え始めている。なお、セッション後のフラッシュバックで、ラタラジューは、自分が腹痛で死んだのは毒を飲まされたからだと訴えている。村人たちは共謀してラタラジューと二人の子どもを毒殺し、ラタラジュー一家の存在をなかったものとして抹殺したと訴えている。こうしたフラッシュバックにおける訴えを受け入れるならば、「キラ」が謀殺の首謀者であった可能性が疑われる。


KA  Ke bhayo? Garo bhayo? Ke bhayo?
   (何が起こりましたか? 大丈夫ですか? 何が起こりましたか?)

CL  Bujina. Bujina.
    (分かりません。分かりません)

KA  Tapailai kehi bhanna man cha kita? Tapailai kehi bhanna man cha?
   (何か言いたいのですか? 何か言いたいのですか?)

CL  Ah ... ah ... mo ... ah ... mero ...
   (あー、あー、も、私の)

KA  Hadjur.
   (はい)

CL  Mero ... ha ... ha ... Mero pet
   (私のお腹)

KA   Hajur.
      (はい)

CL  Ah ... oh ... dukahuncha.
   (あー、おー、痛い)

KA  Tapaiko pet dukyo?
   (お腹が痛いのですか?)

CL  Ah!
      (あー)

KA  Tapaiko mritu ke bhayera bhako?
   (あなたが死んだ原因は何ですか?)
注:「死んだ原因」のように、特定された質問であれば、ラタラジューはきちんと答えることができるのである。

CL  Oh ... oh ... Ma ... rog ...
   (おー、おー、私、病気)

KA  Tapaiko mritu ke bhayera bhako?
   (あなたが死んだ原因は何ですか?)

CL  Rog ... Rog.
   (病気、病気)
注:4年前の2005年の日本語セッションのときには、ラタラジューは「老衰」で死んだと答えている。

KA  Rog?
   (病気ですか?)

CL Ah.
   (はい)

KA  Ke ko rog lagyo?
   (何の病気ですか?)

CL  Au ... ha .... pet.
   (あう、はー、お腹か)

KA  Pet ?
   (お腹?)

CL  Pet dukahuncha.
   (お腹が痛い)

KA  Pet dukera?
   (お腹が痛いのですか?)

CL  Ah ... ho ... ah... guhar ... ha ...
   (あー、はい、あー、助けて。はー、はー)

KA  Pet dukera?
   (お腹が痛いのですか?)

CL  Ahu ... ho ... ah ... guhar ruha ... ha ...
   (あふー、はい、助けて。はー、はー)
注:この腹痛の苦しみをラタラジュー人格が訴えているときに、里沙さんの胃部が痙攣発作を起こしている。前世人格の身体症状が、現世人格に再現化されるという現象が起こるのである。これは、先立つ2005年の「タエの事例」においても、タエ人格が吾妻川の泥流に呑まれて溺死するときの咳き込みなどの激しい苦しみが現世の里沙さんに再現化している。里沙さんが「前世の記憶」を語っているだけならば、このような激しい身体症状の再現化現象が起こることはないと思われる。

KA  Ke bhayo dukhyo?
   ( 痛いのですか?)

CL  guhar! ... guhar!.
   (助けて、助けて)

KA  Kati barsama bitnu bhako?
   (死んだ時は何歳でしたか?)
注:「死んだ時」のように、時期の特定された質問には、ラタラジューはきちんと答えることができるのである。


CL  Ah ... ah ...
      (あー、あー)

KA  Kati barsama ...
   (何歳でしたか?)

CL  Umer ... Mero ... umer ...
   (歳は、私の歳は)

KA  Hajur. Bite ko umer.
   (はい。死んだ歳は?)

CL  Ath satori ... ah ...
   (8と70、あー)

KA  Hajur?
   (はい?)

CL  Ath satori.
      (8と70
注:年齢表示の78を「8と70」という表示法は、現代ネパール語にはない。ソバナ博士の現地調査によって、一昔前のナル村では「8と70」という表示法を用いていたことが判明している。現代ネパール人の対話者カルパナさんには、「8と70」の意味が理解できないので、「70ですか?」と再度尋ねている。この事実は、里沙さんが現代ネパール人からは「8と70」という年齢表示を学ぶことはできないことを示している。つまり、里沙さんは、ネパール語を学んでいないことの強力な傍証である。


KA  Sattari?
   (70ですか?

CL  Ath satori.
      (8と70

(その29へつづく)

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